著者 野口悠紀雄さんは経済学分野のエリート教授らしい。
沢山本を執筆している。一橋大学や東京大学、スタンフォード大学などで教授をしている。
専攻はファイナンス理論、日本経済論。
ビットコインとは何か。
ブロックチェーンとは何か。
それらを使って何ができるかについて、技術的な話はほとんど無しに、
概要を知ることができる本で、総じて非常に読みやすい。
本書は一貫してポジティブなメッセージを発している。
ブロックチェーンは第四時産業革命であり、ITの弱点を補完し、完成させるものである。
協力なディスラプター(破壊的革新者)になり得る。
・経営者、管理者不要の仕組みができたこと。
・データ改ざんができないため、インターネットの弱点である真正性を補完できること
これによって今までのインターネットでは難しかった、経済的価値の受け渡しが管理者なしでできるようになった。
この価値は間違いない。だからこそ仮想通貨がここまで人気になっている。
ただ、ビットコインのコア開発者は管理者と違うのか?という点が僕にはわからない。
報酬をもらっていないから管理者ではない、ということになるのだろうか。
そもそも何かの仕組みを作るときは、その仕組みをデザインする人間が不可欠であり、
その設計の上で、ブロックチェーンを用いたシステムが機能する。
完全にデザインまでAIがやらないかぎり、人から独立したシステムはありえない。
僕にはこの点がうまく理解できない。
結局ブロックチェーンが活きるシステムは、より良い世界を目指すボランティア達が作り上げるものなのだろうか。
だとしたら大企業がブロックチェーンを使って、利益をあげようということが可能なのだろうか。
そもそも大企業が介在したらブロックチェーンの良さ、管理者不在が失われてしまいそうだ。
ブロックチェーンで、
スマートコントラクトも経営者不在のDAO(Decentralized Autonomous Organization)も可能になると、
確かに未来はそういう世界が待っていると思う。
例えば、簡単にモノやサービスをシェアできたり、自由に仕事を探して報酬をもらえる社会だ。
しかし、それは未来の話であって、今現時点では不可能だ。
この本は未来のことを話している、ということを認識しないといけない。
未来は確かにブロックチェーン的技術が活躍している可能性が高い。
でも、その頃の技術は現在の未熟で電力消費量が大きく、処理速度の遅いブロックチェーンとは大きく違ったものになっているだろう。
今手元の技術でできること
あと2、3年後にできるようになること
10年後にできているかもしれないこと
これらを区別せず、技術的理解が未熟な戦略を立てると、大惨事が起きる。
しかし、改めて思うのは、イノベーションを生み出すには政府の戦略、サポートが不可欠だということ。
法規制に縛られると、既得権益ばかりが幅を利かせて、小さい革新の種は育たない。
ブロックチェーンも有効活用できるかどうかは政府の支援にかかっている。
日本でイノベーションが生まれないのは、規制でがんじがらめになっているという側面もある。
世の中みんな既得権益を手放したくないのだ。
入門 ビットコインとブロックチェーン (PHPビジネス新書) [ 野口悠紀雄 ]
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