60年以上前に書かれたSF小説である。
2009年に新装版として発行されたので、文章は現代語訳。
前知識無く読み始めると、この話がどこに向かうのか全く予測できない。
地球から火星に行って、火星から水星に行って、また地球に帰ってきて、タイタンに行く。
主人公マラカイ・コンスタントは、どこに行くかは予め言われているのだけど、予測のしない形で事態がドンドン転がっていく。
文章はユーモラスで、飽きない。
楽しい小説とは、こういうものを言うのだろうと思う。
人と人生の情けなさ、馬鹿馬鹿しさを面白おかしく、淡々と描きながらストーリーは進んでいく。
主人公コンスタントは、過去、現在、未来を超越したウィンストン・ナイルズ・ラムファードにひたすら操られて、奇想天外な人生を送っていくのだけど、
ウィンストン・ナイルズ・ラムファードも、
さらには人類全てが、どこか遠くにあるトラルファマドール星の機械達によって、歴史を操られているのであった。
人は大きなものの意思に抗うことができない。
個々の人は、ただ、大きな意思に動かされているだけかもしれない。
それでも、人は人であり、その偉大さや尊厳が損なわれることはない。
そういったことを著者は言いたかったのだと思われる。
ビアトリスは言う。
「だれにとってもいちばん不幸なことがあるとしたら、それはだれにもなにごとにも利用されないことである。
わたしを利用してくれてありがとう。
たとえ、わたしが利用されたがらなかったにしても。」
この本は面白いから友達に薦めたいと思う。