女のいない男たち 村上春樹

村上春樹の最新刊が出ると、自然と手に取る。
なぜだか、よくわからない。
だけど、手に取って、暇を持て余した時に読む。
そこには、いつも通りの語り口調が続いていて、
現実と非現実がうまく融合した狭間のような世界が展開していて、
僕はその話の筋をとてもすんなりと受け入れる。
正直、必ず登場してきて意味ありげに語る女とか、頻繁に繰り返されるセックスとか、射精とか、
登場人物が少なからず陥る孤独とかにはうんざりしているし、
本のくせにつらつらと並べられる音楽家の名前とかにはもう言葉もない。
「女のいない男たち」
村上春樹、9年ぶりの短編小説世界。
その物語はより深く、より鋭く、予測を超える。
(笑)
村上春樹は学校のクラスの目立たないところにいて、
人気グループと上手くいかなくて少し疲れた時に、相手をしてくれる冴えない、
けど、物静かで、人づきあいが苦手だけど、優しい友人に似ている。
そいつは、とても冴えない風貌だから、大した恋愛なんかしたことがない。
情熱的なセックスなんかとは無縁だ。
だからかもしれない。
そいつの奥底には強烈な執着がヘドロのようにこびりついている。
そしてそれは何年も、何十年たっても、死ぬまで消えることはない。
もちろん、気づかないうちに忘れていることはある。
でもふとしたきっかけで、そのヘドロがむくむくと大きくなって、彼の心を支配してしまう。
それは、出会うことのできなかった知的で、美しくて、純粋な心もった、それでいてセクシーなところもある理想の女性像であり、
その女性との恋であり、情熱的で穏やかなセックスであり、緊密な時間。
まさに、14歳の時に消しゴムの半分をちぎって貸してくれた隣の席の美しい女の子との恋。
それぞれの国の男は、それぞれの民族独自の歴史と記憶から、民族共通の憧憬を抱いて生きているんじゃないだろうか。
村上春樹が延々と語り続けるそれは、
日本人男子が誰でも持つ憧憬。
あるべき過去の記憶。
そして、現実には無かった過去の記憶。
正直、そんなもの吐き気がする。
だけど、それを忘れられない僕もいる。
だから本を手に取るんだと思う。
誰かに共感してほしくて。

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コメント

  1. SECRET: 0
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    尖閣騒動の煽りで中国の書店から自分の作品が消えたと嘆く、朝日新聞への寄稿を読んで、
    加害国と被害国との区別もつかぬ村上春樹の幼稚なレベルに驚いた。
    丹念に読むと「騒ぎを煽る政治家や論客」への注意を呼びかけるなど、
    暗に尖閣の国有化を進めた自国を批判している。
    だから中国メディアはこれを歓迎し、全訳まで配信した。
    その直後にノーベル文学賞を逃したのはよかった。

  2. ひろよしだ says:

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    そんなことがあったとは、知りませんでした。
    大変勉強になります。