弁護士業界の革命児、起つ 西田研志(Nishida Kenshi)

西田研志氏は正義の味方か、金の亡者か。
この本は、古い体制と既得権益を固持し、胡坐をかいている弁護士会への批判本であり、
弁護士業界の革命児と己を定義し、社会正義のために戦っていく未来の同志に向けて書かれた
西田氏の自著である。
西田氏は元法律事務所ホームロイヤーズ所長弁護士であり、現在はMIRAIOの所長弁護士をしている。
1949年、一橋大学法学部卒業。学生時代に一橋大学奥アマゾン第二次踏査体長を務める。
卒業後、日商岩井に入社、一年で退社。8度目の司法試験挑戦で合格したのは36歳。38歳で弁護士になる。
遅咲きの人だ。
社会正義のため、ミャンマー民主化運動支援、フィリピン残留日本人救済活動、ドミニカ移民問題などに取り組んできたと本書で紹介されている。
既得権益を持つ組織が腐ることは容易に想像ができる。
西田氏は弁護士が、高い金をとって、サービス内容も質も不透明な高級料亭だと言っている。
弁護士会は会員に様々な規範やルールを要求し、
何百年も昔から変わらない個人商店レベルの仕事の仕方を強要し続ける。
広告禁止、報酬規程によって、競争原理を排除し、年数十件の仕事で1千万、2千万の年収が得られるような体制を維持しようとする。
国民のためでなく、自分たちの利益を守るための組織だと西田氏は批判する。
法外な料金を取って、サービスの質もわからない弁護士に進んで仕事を依頼しようという人は普通いない。
このような体制が続けられていれば、世の中は依然多くの問題を抱えていたとしても、
弁護士を利用できる人は限られてしまい、結果として弁護士が受ける依頼の量は少なくなる。
たくさん弁護士が生まれる制度に司法試験を変えても、肝心の新人弁護士を食べさせられる事務所がない。 
西田氏は正しいことを言っている。
「私は「弁護士」という仕事を、常にマーケットやサービスの観点から客観的に見ることを心がけている。」
弁護士は結局のところサービス業であり、その提供するサービスとは、「困っている人を助ける」ことだと。
2万5千人程度(2008年当時)しかいない弁護士が一人当たり年30件を処理しても、せいぜい60万件。
1000万人(西田氏による)の何らかの形で弁護士を必要としている人達を助けるには少なすぎる。
そのためには「マニュアル化」、「パラリーガル(事務員)の活用」、「IT化」の三つを駆使して、
案件を効率的に捌いていくこと。それと同時に価格破壊を起こすことが必要だと説いている。
弁護士は高い。だからお願いするのは怖い。これが僕の認識。
サービスが大衆商品化されて、リーズナブルな価格で受けられるようになれば、
それは素晴らしいことだと思う。
それによって西田氏が大いにお金を儲けたとしてもそれは、世の中から必要とされるサービスを提供できているからこそなのだ。
決して、咎められたりするものではない。
西田氏が作ったMIRAIOの前進、ホームロイヤーズでは、
債務問題に加え、交通事故、医療過誤、企業法務(中国進出)、国際法務(経営コンサル)、知的財産を商品化したと語っている。商品化という言葉が面白い。
業務をパッケージ化することで大量案件を高速で処理することが想定されている。
だけど、法律というのは難しいもので、必ずしも定型で処理できるものばかりではない。
個別の入り組んだ事情を整理して、証拠を集め、法というルールのもとに、独創的な判断を下さなければならないこともあるだろう。こうした場合、パッケージ化は役に立たない。
安くて、定型化されたサービスを提供する法律事務所があってもいいし、
高くて、オーダーメイドの上質なサービスを提供する法律事務所があってもいい。
ただいえることは、弁護士業ももっと身近で利用しやすくて、透明性が高いものである必要があること。
西田氏は、そのような世界を作るのに貢献した人なのだろう。
独占禁止法違反で弁護士会を訴えた。
広告を打ちまくって弁護士を身近なものに変えた。(特定分野だけだけど)
一時期、日本の電車に乗ってて、過払い金返還の広告を見ない日は無かった。
日本では他国に比べて弁護士は極めて特権的な権限を与えられているらしい。
そうじゃなくても、ビジネスをしていると至るところで弁護士が必要な場面にでくわす。
法律の知識無しでは、ビジネスはままならない。
契約書の一つもまともに作れないし、会社も設立できない。
本来、弁護士は活躍できる場面がものすごくたくさんあるはずなのだ。
この本で血気盛んに意気込んでいる西田氏。
しかし、その後の活躍がどうかというと、心もとない。
未だにMIRAIOに所属している弁護士は西田氏含めて4人くらいしかいないし、
事務所もたくさんあったのに今は縮小し、東京くらいにしかない。
それに効率化を謳いながらも、結構仕事がおそいらしい。
かつては過払い金返還案件で荒稼ぎし、勢いもあったのに、今や普通の弁護士事務所に成り下がってしまったのではないか。
西田氏がもう75歳と高齢なのも要因の一つかもしれない。
今はB型肝炎ウィルスの給付金関係に取り組んでいるようだが、、。
MIRAIOに未来はないかもしれない。
でも、同じ志を持った若い弁護士が西田氏のやり方、意思を引き継いで、
弁護士業界を盛り上げていってくれればいいと思う。
なんてったって、弁護士は私生活にもビジネスにも必要なのだ。
この本を読んで、ちょっと弁護士になりたいと思った。

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