コンビニ人間 村田沙耶香

第155回芥川賞受賞作品。
村田沙也加さんは1979年生まれ。
2003年「授乳」で第46回群像新人文学賞を受賞してデビューしているから、作家歴は長い。
発表した過去の作品は数々の賞を獲得したり、候補になったりと評価が高い。
実際にコンビニでバイトしているらしい。週に2~3回。今でもしているのか?
だから、コンビニの描写には、普通に利用客として来ているだけでは気づかないリアルなディテールがある。
この本のテーマは、人の世の常識? と理解しました。
普通の人間はこうあらなきゃいけない。
このくらいの年齢でこの性別ならこう振る舞って、こういうことで悩んで、こうあらなきゃいけないっていう社会の常識。
その一般感覚を持たない女性が、それでもうまく生きていこうと、
マニュアルの整ったコンビニバイトとして役割を必死で演じることで世間とのつながりを見出すこと早18年。
30代半ばになると、バイトで生活していたり、結婚も出産もしていない彼女はただ自立して生きている、
というだけでは社会というか周りの人間達から認められなくなる。
そして、年相応のあるべき姿を半ば周囲に強要されることから平和で安心の世界が揺らぎだす。
周りの人間が疑問をもたずに身に着けてきた人の世のマニュアルを、身につけられなかった一人の女性が、
それでも社会の中で正しく生きていこうと努力するさまを滑稽に描く。
その中で、読者に、じゃあ、正しい生き方って結局何?
あなたを規定しているその世界のとらえかた、価値判断基準って正しいの?
と疑問を投げかける。
日本人って日本人の単一な常識というか、日本人としてのマニュアルみたいなものを、
子供の頃から大人たち周囲の人たちと関係をもつなかで無意識のうちに叩き込まれて育っている。
普段あまり疑問を持たないそのあるべき振る舞い方。
当たり前すぎてマニュアル化さえされていない人としてのあるべき所作。
それが、現代に生きる人たちに程度の差こそあれ、閉塞感を感じさせている。
むしろ嫌だと思いつつも、僕たちは無意識のうちに強要する側になってさえいる。
そのマニュアルが納得できず、すんなり受け入れられず、失格の烙印を押された人がいたら。
その人はコンビニという超マニュアル化された世界のなかにだけ、安心を得ることができるのではないだろうか。
人間は縄文時代から何にも変わっていない。
強いオスが、美人で魅力的なメスを囲う社会は何も変わっていない。
子孫を残せない人間、役に立たない人間は必要ない存在として排除される村に現代人は未だ生きている。
本書の登場人物はそう言って憤る。
この価値観は、日本人だからこそのもの。
だから、この価値観が必ずしも理解されない世界もある。
とても閉塞的な本。
まさに日本人の書いた日本人のための日本人の本。

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