フランフランの法則 「楽しさ」を売るデザインマーケティング 川島蓉子

この本はフランフランの生い立ちを書いたもの。
僕はこの世の中の需要はほとんど満たされてしまっていて(先進国限定だが)、
人に明確で自覚したニーズでかつ満たされていないものなど、もう無いのではないかと考えている。
むしろ現代の人は、ニーズを作ってもらうことを求めているのでは?
生きるのに必要なニーズよりももっと贅沢なものを求めているのでは?
それはデザインとか流行とか、雰囲気とか、切羽詰ったものとは一線を画すものなのでは?
そんなことを意識してか、しないでか、手に取ったのが本書だ。
著者は川島蓉子。
早稲田商業学部卒。文化服装学院マーチャンダイジング科終了。(そんな大学院が存在するのか)
1984年伊藤忠ファッションシステム株式会社入社。
ファッションの視点から消費者・市場の動向を分析し、
アパレル、化粧品、流通、家電、自動車、インテリアなどの会員企業と異業種ネットワークを組み、
売り場・商品開発などのプロジェクトを手がける。
それなりの都会に住んでいたらもうフランフランのことを知らないひとはいないだろう。
香港にもフランフランの店舗はある。これは2003年に出店した海外一号店らしい。
いろんなカラフルで面白い雑貨が置いてあるイメージ。
フランフランはブランド名であって、会社名ではない。
バルスというラピュタみたいな名前の会社が扱っているブランドの一つ。
そのほかに現在は、高級志向のBALS Tokyo、和の美を追求するJ-PERIOD、都会と自然を楽しむ人のためのWTWなどがある。こうしたブランドは増えたり減ったりして今はこの4つに落ち着いているようだ。
バルスの企業理念は「VALUE by DESIGN」
デザインを商品の付加価値の一つとはっきり認識し、企業ブランドの柱に位置づけた草分け的存在。
創業者の高島氏はマルイチセーリングという福井県本社の家具製造卸会社のトップ営業マンだった。
トップだったからこそ自分の子会社を作ることが許された。
この会社はバブル崩壊で危機的状況に追い込まれ、高島氏自身が買い取ることになる。
そして始めたのがフランフランだった。
フランフランはインテリア特に家具を売ることを目指したブランドとしてスタートした。
家具だとなかなか買ってくれる人がいないので、雑貨を置いたところこれがヒット。
雑貨のイメージが強くなっているけど、インテリア家具の会社であるというスタンスは捨てていない。
現在海外で進出しているのは香港くらいで十分な国際展開ができているとはいえない。
従業員数はアルバイト等を含んで2100人強だ。
ファッションというと直ぐに思い浮かぶのは服。
だけど実際はその領域にとどまらない。
服が第一なのは入れ替えが早く、流行を取り入れやすいからだ。
本来ファッションとは生活の全てに関わるものであるはず、
それは日用雑貨や家具も含めて。
生活全体にファッションを取り入れ、日常をより豊かにすること。
一言で言えば社長の高島郁夫氏が目指しているのはこれに尽きるのではないか。
洗練された東京の人たちは、服からさらに視野を広げ、雑貨、家具、自分の生活空間にもデザインを取り入れはじめた。
この時代の進歩、デザインに対する関心の高まりに合わせてフランフランは絶妙のタイミングで登場し、人気を呼ぶことになった。
著者によれば
ファッションとは、まち・みせ・ひとの動きが最も早い段階で現象化すること
らしい。
現在は、衣、食について消費レベルが確立し、住に目が向けられ始めた段階だそうだ。
これは東京だからこそだろう。
香港もまあ、同じことが言えるかもしれない。
でも中国はまず前者二つがそろってないレベルだから、フランフランが進出するにはまだ早いだろう。
上海とか広州、深センの一部の洗練された中国人は別だけど。
高島氏は「お客様は自分のことを知らない」と言い切るそうだ。
僕が気になっていたことがここに書いてあった。
フランフランを訪れるお客の約半分は、とりたてて目的もなく立ち寄っている。
何を買うというはっきりした目的もなく、ぶらぶら見て回ることを自体を楽しむ。
そして、そのつもりはなかったのに思いがけず気に入って買ってしまう。
「実は、前からこんなものが欲しかった」
後付の理由。
フランフラン流に解釈すれば、
お客様視点を持ち、現状のニーズを形にすることではなく、あくまで現状を踏まえた上で近未来の気分やシーンを想定すること。
欲望(ニーズというよりこっちのほうがしっくりくる)は作られるもの。
そしてデザインやお洒落なライフスタイルは間違いなくこのようなタイプの欲望の一つだ。
デザインは重要な経営資源のひとつ。
デザインというと、外見であり、技術や機能などの中身とは区別されたものと捉えられがちだけど、そうではない。
消費者は外見、中身を分けてとらえない。
デザインとは中身を含めた総体である。
こうした考えはアップルが圧倒的な成功によって証明した。
これからはデザインに対するセンス、感性がもっと重要な世の中になってくんだろうな。
いや、もう何年も昔からなってるか。
いつでも世の中というマラソンの一番後ろを走っている気分ですわ。

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