この本はうつ病とは何か、うつ病への対処はどうしたら良いかについて、
和田秀樹さんがとても明快に書いた本である。
著者 和田秀樹(わだひでき)とは
1960年生まれ、東大医学部卒業の精神科医。
和田秀樹こころと体のクリニック院長。
日本人として初めて、アメリカで最も人気のある精神分析学派である自己心理学の国際年鑑に論文を掲載した。
受験本から、社説、専門分野の病気に関する本など、多数の著書がある。
僕の友人にも彼の本を読んで、受験勉強を決意し、立派に国立大学に合格した者がいるなど、
かなり影響力のある人物。
うつ病とは何か
うつ病は心の風邪と言われているけど、それは誤り。
自然治癒の可能性が低いところがうつ病の怖いところ。
20〜39歳の死因のトップは自殺である。
年間日本で3万人自殺しているが、このうち2万人程度はうつ病であったと推測されている。
つまり、うつ病は人を殺す最も怖い病気の一つと言って良い。
うつ病の症状には以下の様なものがある。
・憂うつな気分が続く
・何をやっても楽しくない
・疲れやすい
・気力がない
・熟睡できない
・イライラが続く
・必要以上に自分を責める
・自分は価値のない人間だと思う
そしてしまいには自殺について繰り返し考えるようにもなる。
僕も軽いうつ病に長い間疾患していた経験がある。
だから怖い。だから学んで、できるだけ予防しようと努めている。
それで本書を取った。
うつ病の原因
心の病気というより、脳の病気であることがわかってきている。
最も強く支持されているのが「セロトニン仮設」。
セロトニンは脳の神経細胞のつなぎ目で、神経伝達物質として働いている。
これが不足すると、情報伝達が悪くなる。
例えば、セロトニンが不足して感情をうまく調整できなくなると、うつ症状が起こる。
セトロニンが不足すると痛みに過敏になる。
抗うつ薬を飲むと、このセロトニンを増加させることができる。飲んだ後一時間後には増加するという。しかし、うつへの効果が現れるのには2週間かかる。
この原因への仮設として、「セロトニン不足の状態を放置しておくと、神経細胞の中で、伝達速度が変わり、脳の神経細胞が死んだり、萎縮したりして起こるのではないか」という考えがある。そしてこの脳細胞の生死に関わっているのが、BDNF(Brain – Derived Neurotrophic Factor脳由来神経栄養因子)という物質であり、実際にこのBDNFが増加するとうつ病の症状が改善するらしい。
うつ病になると、脳の細胞を殺してしまい、脳の構造も変えてしまう。
これが本当だとするとかなり怖い病気だと思う。
うつ病の治し方
抗うつ薬
まず基本は薬とのこと。
抗うつ薬は1950年代に開発されており、歴史は長い。
初期のものを「三環系抗うつ薬(TCA、Tricyclic Antidepressants)」という。
これは抗コリン作用という副作用があるらしい。アセチルコリン受容体を阻害するもので、喉の渇き、便秘、排尿困難、眼圧上昇などの影響があるとのこと。
第2世代が「四環系抗うつ薬(Tetracyclic antidepressant)」。
第3世代が「SSRI(Selective Serotonin Reuptake Inhibitors) 選択的セロトニン再取り込み阻害薬」。これは抗コリン作用が少ない。ただ、胃腸症状や性機能障害の副作用がある。
第4世代が「SNRI(Serotonin & Norepinephrine Reuptake Inhibitors) セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬」ノルアドレナリンは興奮、やる気の作用があるので、意欲もでる。
その他「5-HT2A 遮断薬」ー不眠・焦燥を押さえる。持続性勃起症などの副作用あり
「NASSA(Noradrenergic And Specific Serotonergic Antiepressant) ノルアドレナリン作動性・特異性セロトニン作動性抗うつ薬」ー眠くなる。などがある。
カウンセリング
認知療法。知ること、冷静に分析することでよくなることもある。
例えば凝り固まった考えがあるとき、以下の視点から見直すといい。
1.第三者の立場で
2.過去や未来の自分なら?
3.経験を踏まえて
4.もう一度、冷静に
うつ病の人は不適応思考という良くない考え方に陥っているのだという。
これには12のパターンがある。
1.二分割思考。成功か失敗か、白か黒かなど両極端。
2.過度の一般化、3.選択的抽出、4.肯定的な側面の否定、5.読心、6.占い、7.破局視、8.縮小視、9.情緒的理由付け、10.「〜すべき」という言い方、11レッテル貼り、12.自己関連付け、
ECT(電気けいれん療法)
ECTは ElectroConvulsive Therapy。
電気を脳に流してけいれんさせると症状が改善するらしい。いわゆる電パチ。
TMS治療
TMSはTranscranial Magnetic Stimulation 経頭蓋磁気刺激。
NHKにも取り上げられたらしい。外部から時期をあてて脳に電流を流して刺激するもの。
日本でも導入する病院が出てきたようで、
「新宿メンタルクリニック アイランドタワー」では63台もニューロスターという治療機を導入してTMS治療を行っているとのこと。一回4万円ほどで30回のセッションが基本。合計すると120万円くらいかかるらしい。うつ病を治すのにはお金が掛かる。。でも失うものの大きさを考えるとこのくらい安いといえるかもしれない。
うつ病の人は脳の扁桃体の活性が高まり、前頭部のDLPFC(背外側前頭前野)の活性が低下しているという。扁桃体は情動を司り、恐怖、不安、悲しみに関係。DLPFCは判断や意欲に関わる部分で扁桃体にブレーキをかけている。TMSは時期によってDLPFCに電気刺激を与え活性化させ、扁桃体の働きにはブレーキをかけるというメカニズム。
うつ病の予防には
なったらコストがかかりすぎ、死のリスクすらあるうつ病。
かからないに越したことはない。
予防するための3つの方法。
1.思考をかえる
2.食生活を整える
3.太陽光を浴びる
うつ病は軽症のうちに治す! [ 和田秀樹 ] |