第2版 リーダーシップ論 ジョン・P・コッター

ジョン・P・コッターはハーバード・ビジネス・スクール松下幸之助記念講座名誉教授。

1972年より、ハーバード・ビジネス・スクールで教鞭を執り、

81年、当時としては史上最年少の34歳で正教授に就任した。

主な著書にLeading Change, Harvard School Press, 1996(邦訳「21世紀の経営リーダーシップ」)、

Matsushita Leadership: Lessons from the 20th Century’s Most Remarkable Entreprener, Free Press, 1997

(邦訳「限りなき魂の成長」、後「幸之助論」と改題されて復刻)がある。

また変革のリーダーシップの実現をサポートするコッター・インターナショナルを興した。

ジョン・P・コッター氏は日本ではそれほど有名とは思われない。日本語のウィキページも無いし。

でも、この本を読めば、この人がリーダーシップ論のグルであるという意味がわかる。

リーダーとマネージャーの違いは何か。

リーダーシップとマネジメントの違いは何か。

そんな問は、本書で初めて聞いた。

いや、僕が無知だからで、こんなことは世の中では常識なのかもしれない。

世の中の管理職の人たちはその違いをはっきりと理解し、両者に求められる能力を身に着け、効果的に使い分けているのかもしれない。

いるわけないか。

コッター氏がいるアメリカでのことはわからないけど、特に日本では。

もしそうだったとしたら、世の中にはもっともっとリーダーがいるはずだ。

リーダーなんて早々お目にかかれるものじゃない。ツチノコか、カイリューか、リーダーかくらい遭遇確率が低い。

そんな中、所変わると、世の中みんなリーダーになのではないか、というくらいリーダーアピールがなされている。

新卒採用面接では、みなこぞってリーダー経験を披露し合っていると聞く。

それが採用に効くと信じているからだ。

そもそもリーダーしか世の中にいないのかっていうツッコミは置いといて、

逆にリーダーだらけの世の中になったら、果たしてどうなんだろう。むしろ効率が低下したりしないだろうか。

リーダーばかりでは組織的に何かを実行するというマネジメントのチカラが弱くなってしまいそうだ。

リーダーとマネージャーでは求められるスキルは全く異なる。

どちらが良いというわけではなく(なんとなくリーダーのほうがカッコよく思えちゃうけど)、それらは補完し合うものである。

マネージャーの役割は与えられた複雑な機能を果たすこと。既にシステムがあって、それを効率良く動かし、目標を達成することが求められる。

リーダーの役割は変革を実現すること。ビジョンを伝搬し、周囲を巻き込んで目的を達成することが求められる。

影響力を及ぼす方法には両者で「統制」と「動機づけ」という違いがある。マネージャーは公式な組織階層によって活動を調整するのに対し、リーダーはインフォーマル・ネットワーク(さまざまな形で結びついた信頼関係)に依存し、活動を調整する。改革を進める場合、既存の組織構造のままでの目的実現は難しいため、インフォーマルな影響力が非常に重要となる。

仕事をする中で、僕はいくつかの重要と思えることに気付いていた。

例えば、チームで動けば個人の何倍も業務ができるという当たり前のこと。

働き方や業務への向き合い方、目指す方向性への理解と行動の実践について、その長たるリーダーが模範を示す必要があること。

チーム員(部下)は駒では無く、人間であり、各人に人生があること。

各人の人生や生き方を尊重し、業務と人生を結びつけること、それを応援することがパフォーマンス向上につながること。

ようは適切な方法で構ってあげればあげれるほどチーム員のほうも進んで働いてくれるようになること。

漠然と掴んでいたこれらのアイデアはリーダーとして求められるスキルや考え方の一部だった。

本書の中では面白い考え方も書かれている。

まず、権力と影響力の考え方。

公式の権威イコール権力ではないという著者の意見には、考えさせられるものがある。高い地位に就いたとしても強い影響力を得られるとは限らない。変革を起こす上で権力はあるに越したことはないが、必要な要素の一つでしかなく、他の手段で代替出来る可能性もある。

優秀なマネージャーは権力を振りかざしたりしない。
相手との相互関係を考慮した上でうまく使い分けている。

1。感謝や恩義を感じさせる
2.豊富な経験や知識の持ち主として信頼される
3.「このマネージャーとは波長が合う」と思わせる
4.「このマネージャーに依存している」と自覚させる
優秀なマネージャーはこれら4つの方法で権力を強化させているという。

さらに、変革を進めるにあたっての反抗勢力に対する対処の仕方も紹介されている。

1.教育とコミュニケーション
2.参画と巻き込み
3.援助と促進
4.交渉と合意
5.操作と取り込み
6.直接的強制と間接的強制
とても実際的。でも、人を巻き込む手段ってリストしてみるとそれほど多くないんだなと気づく。

最後にボスマネジメント。

目的を達成するためにはボスもマネジメントしろと。
昔、ある上司の下で働いていたとき、その人の命令が間違っていると思っていても、
トップダウンの組織力を維持するため、その人の権力を尊重するため、
部下は黙って実行することが正しいと思って行動していた。
その時のストレスはとても大きかった。

しかし、尊敬する優秀な人に思い切り否定された。

それは社員失格だ、と。
多分ずっと忘れない。
もし上司が間違っていたら、しっかり意見を具申しろ、とかいうことではない。
もし自分になにかやりたいこと、やるべきことがあるのであれば、
優秀な社員なら上司に使われるのではなく、上司を積極的に使うことを考えろと、
その人は働きぶりで常に証明し続けてきた。

何かをやるのに、実はその人の身分はあまり重要ではない可能性がある。
その上司、またその上司、さらにその上司、やりたいことを意思決定できるレベルの権力を持つ上の人まで巻き込んで、
自分のやりたいことを、その人のやりたいことに変えてしまえば良いだけだからである。

世の中に神様みたいな絶対的トップは存在しない。
会社の社長にも会長がいたり、株主がいたりする。

だからこそ、ボスマネジメントは誰にとっても重要だ。

教授の話すリーダーシップ論なんて、さぞかしインテリなんだろうと予想していたけど、その真逆な本書。

しっくりくるのは、自分が変革を起こそうとした時にぶつかったまさにその困難、気づき、その対処法が、
体系的に文章化されていたから。

おすすめです。

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