中国の全省でバカヤローと叫ぶ 中田和尚

中国駐在員が趣味で出したおバカ旅行記。一言でいうとそういう本です。
でも、面白い。
その辺の中国本なんかよりずっと面白い。
これはすべて、筆者のユーモアセンスのおかげ。
系統としてはゲッツ板谷の旅行記に非常に近い気がする。

こういう面白いおっさんっているんだよなー。多分、こういう人と一緒に働くのは楽しい。

筆者プロフィール
中田和尚(なかだおしょう) どっかの会社のサラリーマンらしいのでこれは本名ではない。
1965年生まれ。兵庫県出身。関西の某上場企業の中間管理職。
38歳で中国広東省に赴任し、仕事の傍ら、週末は面白い出来事を求めて中国国内を放浪していた。
3年で日本へ帰任し(それにしては中国語できすぎじゃないか?本の内容から察するに。うらやましい!)
その後も暇を見つけては旅行に行こうと画策しているが、ことごとく嫁に阻止されている。
日刊で、メルマガ「ダジャレで覚える中国語単語(http://www.mag2.com/m/0001198716.html)」を配信中。(まだこのサイト存在してる)

駐在員は暇だ。何もしなければ。
それは、どこに住んでいても同じだろうけど。
かと言ってその国にいる期間は限られている。ずっと永住するわけではない。
その短い駐在期間をどう使うかは人それぞれ。
おっさんの多くはゴルフに明け暮れている気がする。
そうではなくても、それ以外のスポーツ団体(ソフトボールなど)に所属している人も結構いる。
健康を維持し、そこそこ社交するならスポーツ団体に所属するのはいい選択肢だ。

この中田さんが選んだのは中国旅行だった。
駐在中に、中国全省を制覇してやろう。この人はそう思い立って、週末せっせと旅に出かけるようになる。
これは日本の全都道府県制覇みたいなもの。それよりももっと厳しいかもしれない。
都道府県に比べると数は少ないけど、中国はでかいから。
省をまたぐ旅行は結構な大旅行になる。

こういうのを目標に掲げる人は一定数いる。
男はこういう、集める系が本質的に好きなのかもしれない。

で、本を読むうちに、中国を観光旅行する目的が、どんどん、省の数を稼ぐ方にシフトして、
本来手段であるはずのものが目的化し始める。目的が義務になるこの矛盾。
中田さんも本書で言っている。

「日常生活から離れて道の土地を訪れることによって、ワクワク感、あるいはスリルを経験し、
終わってみれば心身ともにリフレッシュしている。これが、オレの考える「旅」の良さである。
だが最近では、あまりに中国内をウロウロし過ぎたせいか、旅に出ても昔のように大きな感動が得づらくなってきた。
これは、「旅」そのものが日常化してしまったためでもあるだろう。」

ようは中田さん、飽きたのである。

これが唯一、この本で得られる教訓めいたセリフ。

あとは、ひたすら中国がボケて、中田さんがツッコむという漫才の繰り返し。

僕も中田さんに負けず劣らず、中国を旅行しまくっている。
だから、同じ場所に行って、同じような体験をして、中田さんはこんなツッコミどころを見つけたのか、
と他人の意見を知ることが面白かった。
逆に行ったことのないところは、中田さんの旅行記を読むと、もう行かなくていいかと思ってしまった。

観光旅行は所詮観光旅行。
どこに行っても行くところはだいたい、観光地。
中田さんも「地球の歩き方」を片手に持っていたようだ。
みんな同じ。だから目的地自体に目新しさはない。
だけど、この本を面白くしているのは中田さんのツッコミ精神だろう。

中国も発展して洗練され、ツッコミどころが減ってきているのは寂しい。

中田さんが残した省、区はこの本を終えるときに5地区(含む台湾)。
3年でこれだけ巡ったのだとしたら、本当に結構すごいと思う。

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