今まで読んできた本の書評を書いてみようと思う。
まず一冊目
「ナニワ金融道 カネと非常の法律講座」青木雄二監修 1994年
どうしてこの本が第一回目なのか。特に理由は無いです。本棚にいつのまにか入ってた。
昔、ナニワ金融道が好きだった。社会の裏事情を知れる気がして。
だけど普通に生きてる分には全然必要の無い知識だったな。そのときは勉強になった気がしてもすぐ忘れるし。
僕はお金の管理はしっかりしているほうで、今まで借金を背負ったこともない。
リボ払いの封筒が届くと、バカにしてるのかとうんざりする。
でもその恐ろしさは良く知ってるつもりだった。昔、借金している人がたくさんいる世界にいたから。
借金することは自分を奴隷にしていることと同じことだと思っていた。
人は金によって動かされる。
負債はそれを返すためにカネ、無ければ労働を対価として支払わなければならない奴隷証だと思っていた。
しかし、この本を読んでみてその考えが少し変わった。
どうやら今の世の中は必ずしも持つものが持たざるものに勝てる世の中ではないらしい。
持てる者(債権者)は王様で、持たざる者(債務者)は搾取されるもの、上下の立場は変わらないが、
必ずしも債権者はその権利の全てを行使できるわけではないようだ。
これは、世の中が全て裁判によって正悪決められることによる。暴力で支配できなくなったからとも言える。
司法制度には大きな欠陥がある。お金と時間がかかることだ。
もし債務者がずうずうしく、小賢しければさまざまな手段を使って判決を遅らせ、執行を先延ばしさせることができる。
一方、債権者は権利を行使するためにお金と時間を払い続けなければならない。
法律は債務者の味方なのだ。わかりやすいのが自己破産。
債権者の立場になってみれば、貸した金が消えてなくなるこの制度、恐ろしいくらいに不利。
法律には「実体法」と「手続法」の二種類あり、実体法(権利や義務の発生を体系づけた法)に欠陥はないが、手続法(権利義務を実現する法)に欠陥があるとこの本は言っている。手続法のうち、権利義務を確定させる裁判法は上で述べたとおりカネと時間がかかり、権利義務を実現させる強制執行法も裁判所は煩雑な手続きにのっとった型にハマった対応しかできず、例えば財産を隠したりといった不誠実な行動に対する有効な手段が整っているわけではないのだ。
もっともこの本は20年も前に書かれた本なので、現在は法律も体制も多少改善されているのだろうけれど、
考えてみれば確かに、何をするにもカネと時間はかかるわけで、債務者から現実的にカネや財産を回収するのは並大抵の労力ではないのだろう。
だからといって、これから先の世の中で借金をしてうまく逃げ回り、どうしようもなく追い詰めたら破産するのが正解だとは僕は思わない。これからはもっと信用社会が進む。人の信用がその価値の源になる。信用を傷つけるような行動は致命的になる。監視社会の側面も強まっていき、財産を隠せる余地も減っていくだろう。
結局のところ、借金はしないのが一番、しても誠実に返すのが一番、返せなくても誠実に対応するのが一番だと、
きれいごとだけど思います。
ナニワ金融道著者の青木雄二氏は45歳で漫画家デビュー、2003年、58歳の若さで他界してしまっている。
最近も連載している新ナニワ金融道は本人の作品ではない。
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