「通貨」はこれからどうなるのか 浜 矩子

今日はタイトルの本を題材にして為替のことを考えてみたい。
まず、浜 矩子(Hama Noriko)という人はどういう人なのか。
専攻はマクロ経済分析と国際経済。
三菱総合研究所でキャリアをスタート。ロンドン駐在事務所長や経済調査部部長などで実力を磨き、
2002年から同志社大学大学院ビジネス研究科というところで教授をしているらしい。
ここはいわゆる日系MBAの大学で日経bizアカデミーの記事によると西日本では3位の人気があるそうだ。
通いたいビジネススクール 2013年調査
世俗的な評価はこんな感じ
http://chitekizaisan.blog28.fc2.com/blog-entry-6502.html
「妖怪人間紫ババア」、「1ドル50円ババア」といったキャッチーなあだ名で親しまれている。
ニコニコ大百科
この本が出版されたのは2012年5月、まだまだ日本が円高だった頃であり、今後もこの傾向が続くのではないかと世間が心配していた頃。浜さんは1ドル50円の時代がくるという論を展開していたが、その後のアベノミクスで相場が真逆に動いているため、自己擁護のためアベノミクス批判をしていると言われている。
この本の主旨は
・基軸通貨が世界から消え、多数の地域通貨が対等する世の中になる
・その例として欧州ユーロの構造は実質破綻しており今の体制では破綻する。
・基軸通貨であったアメリカには限界が来ており、早晩価値の暴落を起こす→1ドル50円時代
・債権大国日本の円の価値が相対的に高まる
といったものであった。
本の中にデータが少なく、感想論に終止している印象なのがこの本があまり時間をかけずに書かれていることを物語っていた。
僅かながら論旨補強するをデータ的なもの。
・2012年度、日本の財政規模は約92兆円。内税収は約40兆円。借金は約44兆円。公債残高は800兆円超。
・GDPは500兆円ほどであり、それ以上の債務残高がある。
・一方日本は2009年末で2712兆円の国富(一国の資産-負債)を有している。また、2010年末の対外資産負債残高は251兆円で世界一である。→日本の円は強い!
・日本の2010年経常収支は、貿易収支が約8兆円プラス、サービス収支が一兆5千億円マイナス、所得収支(配当、投資収益)が11兆6千億円のプラスであり全体の経常収支は17兆1千億円のプラス。→実は日本は貿易立国ではなく、投資大国である!→日本の円は強い!
どうして、1ドル50円ババアさんの説に反して日本は円安1ドル100円時代に回帰してしまったのだろうか。
僕は浜さんの基軸通貨の時代は終焉し、地域通貨の時代が来るという主張は長期的にみて正しいと思う。
アメリカは長期的には確固たる地位を維持できないであろうことは明確だ。
それあアメリカが投資大国であるのに対し債務大国であること、中国、アジア、アフリカ、その他発展途上国の勢力が増し、世界各国の経済規模が大きくなるにつれて相対的な地位の低下が避けられないことは明確だからだ。
現在、システムトラブルはあるにせよビットコインという新たな通貨が世の中に大きな影響を及ぼしつつあることも地域通過の方向性のひとつの側面だろう。
通貨と国家は従来切っても切り離せないものであったけど、今後は信頼のおけるシステムさえ出来上がれば必ずしも通貨は国家によって統制される必要はなくなる。
そのときは、地域ごと、ビジネス毎、経済活動毎のニーズにあった特殊な通貨が台頭してくることも容易に想像できる。
そもそも財政と連動しないユーロのような通過はまさにビッドコインのような役割になっていくのが妥当かもしれない。
どの通貨を使うのか、それは個々のニーズに応じて個人、企業が自由に選択できる時代がくるだろう。
だけど、それはまだもう少し先の話なのだ。
依然として世界一の経済大国であるアメリカがその地位を譲るのもまだもう少し先の話。
未だに世の中はドルを中心に動いているし、アメリカの経済回復が世界経済に大きく影響していることは議論の余地がない。
1ドル50円ババアさんの問題はそれがすぐ明日くるかのように語ってしまったことなのだ。
ただ、1ドル50円の時代がくると、これだけの情報で言い切ることはできない。
なぜなら通貨価値は国力の差、信用力の差だけで決まるわけではないからだ。
購買力がいい例だ。例えば日本がジャブジャブと円を刷ってインフレを起こしたらどうだろうか。
実際これはアベノミクスがやろうとしていることでもある。
そのときは、日本国内での円の価値が相対的に下がる。100円のコーヒーが200円となるかもしれない。
この場合、国の信用力の差で理論的に1ドル50円になったとしても、円の購買力が2分の1になるわけだから、
結果として1ドル100円が維持されるわけだ。
為替は、投機的側面、貿易的側面、購買力的側面がそれぞれ影響し合うわけだし、他国通貨との相対的な関係によって決まるわけだから、投機的側面(国の信用力)だけで理論を展開することはできないのだ。
では、日本円は上記3つの側面から見てどうなっていくのだろうか。
投機的側面は間違いなく円高方向だろう。1ドル50円ババアさんの論説どおり。
貿易的側面は現在貿易赤字であり、工場を他国に移している状況や、エネルギー、食料、その他諸々を外国に依存している現状を鑑みて円安方向。
購買力的側面は、日本はインフレを目指し、経済を活性化させると同時に国の借金を減らそうとしているわけだから円安方向。
現在は後者が優勢の状況といえる。
しかし、円高と円安のこのせめぎ合いが今後どうなっていくのか。
相対的な力関係はデータをもとに分析しなければ断言できないが、
投機的側面での日本の信頼性は高い一方で、それに比し貿易収支の純額が小さいこと、インフレ率も妥当な範囲に抑えられるだろうと予想すると、やっぱり長期的には1ドル50円ババアさんの言うようにある程度円高基調にもどっていくだろうと僕は予想する。
とここまで予想した上で私生活の話に戻ると、
僕は現在香港ドルでお金を稼いでいて、香港ドルはドルペッグ制。つまり制度自体が変わらなければ今後ドルに連動して資産は相対的に減少していくことになるわけです。
なので、円安方向が終わり、理論に適った円高の方向性に戻るしかるべきタイミングで日本円にお金を移そう。。。
この時期がいつくるのか、1年では来ないけど、10年後にはきそう。
アメリカが幻想的な経済回復と成長基調をどれだけ維持できるかにかかっている。
やっぱり今はアメリカの一挙手一投足を良く見ておきつつ、発展途上国の経済規模拡大を横目でみておくことが正しい世界の見方であると思う。



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