水永政志氏はスター・マイカ株式会社代表取締役社長。
大学でも非常勤講師として、起業や経営に関する講義を担当している。
僕はいわば中小企業を経営している。
その資金調達手段はもっぱら自己資金か、銀行融資。
自分たちで稼いだキャッシュフローの範囲内で実直に成長していくか、
その実績と不動産担保や個人保証に基づく間接金融だ。
これはいわば過去や現在をベースとした資金調達といえる。
この資金調達方法で事業を拡大させていく場合、地道であるが、爆発力に欠けると常々思っていた。
世の中にあるベンチャー企業は、全く異なる考え方によって資金を調達し、リスクを取ってチャレンジしている。
直接金融を基本とした、スピード感のある事業を興せないか最近良く考えている。
そう思って本書を手にとった。
著者によると、ベンチャー企業と中小企業の違いは
「成長志向」と「積極的・冒険的なスピリット」
であるという。
成長企業では、キャッシュフロー経営が不可欠であるという視点は面白い。
手元にある資金をつかって地道に成長していく経営ではあまり経験しない。
売上の成長が早すぎて、回収する前に経費で資金が枯渇してしまうというわけだ。
この自体を解決するために、ベンチャー企業はおもにエクイティ・ファイナンスで資金を調達する。
銀行は地に足ついた回収の確実な事業にしか融資してくれないからだ。
しかし、エクイティ・ファイナンスは気をつけなければならない。
株式を発行して資金を調達するということは、創業者の持ち分が減ることを意味するから。
どの程度までなら株を投資家に渡してよいのか。
必要な資金と照らし合わせて計画的に行わないと、会社の意思決定権を失いかねない。
そこでベンチャー企業にとって特に重要になるのが資本政策である。
ファイナンスの勉強はしたことがあったが、資本政策について学んだことはなかった。
資本政策は上場を目指すようなベンチャー企業特有の課題だからだ。
企業の始めから、どの段階で何%の株を発行し、いくら調達するのか。その段階は上場まで何ステップあるのか。
そうしたことを創業当初からしっかり計画していくことが求められる。
上場時のプロセスが簡単にまとめられているのも本書の特徴である。
上場は普通の人の人生にそうそうあることではないので、詳しく書かれている本は少ない。
そして最後にエクジット戦略にも言及されている。
起業家たるもの、最後はどうキレイに会社を公に譲り渡すかを考えないといけない。
子供が家を巣立つようなもの。
いくつかのケースがある。
1。なかなかイクジットしない。
2。引退しても株を売らない。
3。株を支柱売却する。
4。事業提携先へ売却する。
5。新経営陣へ売却する。
創業経営者の真価はイクジット後に問われるという。
この本は、広く浅く優しくベンチャー企業のファイナンスや、経営戦略、ガバナンスについて解説されている。
入門編として読んだり、ざっとおさらいするには良いけど、僕には少し物足りなく感じた。