モリタクの300万円なんちゃらの書評、二つ目のテーマ。
格差社会の到来について。
それは所得格差が100倍になる時代だとモリタクは言っている。
アメリカ型を日本がめざすなら、これは疑いようもない結果であって、
既に実際に日本で起きつつある変化だ。
IT長者、フリーターの増加、成果主義、アメリカ型を目指す日本では従来型のシステムからここ数年で大きく変わり始めている。
成功を賞賛するアメリカ型が世界の大部分を占めているわけで、
これはある意味グローバルスタンダードであるといえる。
グローバルスタンダードだからこそ性質が悪い。
それは、能力、金、権力のある世代が代々と特権階級を維持し(成果主義といってもスタートラインの差によって結果はそうなる)、
それが無い人たちは奴隷として特権階級のために働く世界だ。
努力した人が報われるのは当たり前、能力も金も努力の結果じゃないか、
それを賞賛することは正しいに決まっている。
ということが一般的な常識だろう。
誰もが、となりでインターネットサーフィンばっかりしている同僚と給料が同じだということを良しとはしないだろう。
「働かざるもの食うべからず」
という言葉が昔からある日本にとっては割りと受け入れられやすい価値観だと思う。
単純に同じだけ努力すれば、同じ時給をもらえると信じていればだけど、、
日本は世界的に異常な国だった。
国民総中流がほぼ実現していた国だ。
所得再分配機能に比較的頼らずとも自走していける社会だった。
モリタクはこれを製造業労働者の年収から説明している。
イギリス月刊誌「マネジメント・トゥデイ」の2001年調査結果によると
主要国製造業労働者の年収は以下のようだったそうだ。
世界一、日本 約650万円
二位、アメリカ 約560万円
三位、ドイツ 約460万円
フランス 約430万円
イギリス 約360万円
機械で代替できるような単純労働でここまで給料をもらっている国は他にはない。
300~400万円精々もらえる程度がグローバルスタンダードなのだと。
成果主義、付加価値主義に移行していけば、今まで守られてきた人たちは
自分が生み出した価値相応の対価しかもらえなくなるのは当然だろう。
アメリカでは2001年時点で経営トップの平均年収が約20億4200万円。
アメリカは年収200万円の労働者も多いから格差は100倍以上。
日本では大企業の社長でも3000万円で、一般社員の年収が700万円~800万円とすると差は4倍程度しかない。
これが格差社会だとモリタクは説明している。
こういう世界を目の当たりにしたとき、日本人はどのように反応するだろうか。
意外とすんなり受け入れてしまうかもしれない。
日本には、江戸時代から続く、階級社会をすんなりと受け入れてしまう国民的土壌があるからだ。
ただ、「成金」という言葉に代表されるように、階級を飛び越えることを悪だという価値観がある。
だから、一定の階級に落ち着くまでは、ホリエモんのように大騒ぎせず、静かにしていることが懸命だろう。
だけど、いったんその地位が定着したら、案外奴隷のように奉仕するのが日本人かもしれない。
そうした日本文化をよく説明した本として「菊と刀」がある。
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行き着く先には二種類あるとモリタクは続ける。
ひとつはアメリカ(イギリス)型。金と地位がつながっていて誰もが頑張る社会
もうひとつはヨーロッパ型。従来から貴族階級と平民という階級制度があって上にいこうと頑張らない社会。
前者は身を粉にして、他を犠牲にして働きまくる社会。
後者は諦めて、人生を楽しむ社会であると極論を展開してる。
そして、後者になりましょうということで、三つ目のテーマ 年収300万円での豊かな生き方の話になる。
モリタクは本の論旨が弱くなってしまうので言及していないけど、
ここでもう一つ経済を成り立たせていく上で重要な論点がある。
財政による所得再分配機能だ。
集めた税金を生活保護とか、年金とか、その他諸々の給付によって経済差を小さくする仕組みだ。
ヨーロッパでは社会保険料がべらぼうに高くて給料の50%を取られるほどだという。
稼いだ人からお金をしっかりもらって、貧しい人たちに分配する仕組みが強固にできあがっている。
大して、アメリカは成功者から金を取りすぎるのはイノベーションの妨げになる、
みんなだって成功してお金持ちになれば同じメリットを享受できるのだという考えの下、
金持ちに対する優遇があり、ヨーロッパほどこの機能の力は強くない。
日本では、所得再分配機能は、低所得者のためというより、もっぱらおじいさんおばあさんのため、
昔お金を使いまくった人の生活水準をそのまま維持してあげるために使われている。
これは問題で、若者に重い荷物を背負わせたまま働かせることにつながってしまうから、
ぜひとも年金給付額は減らしてほしいけど、正しく機能すれば、所得格差を減らして、弱者を救うセーフティネットになる。仮に給料で格差が進んでも、それを緩和させる手段になりえる。
アメリカ型を日本が推し進めるのであれば、この部分をしっかりと議論していくことが必要だと思う。
ただ所得再分配機能は本当の弱者を救う手段にはなっても、国民全員を救うことはできない。
税金という形で費用を負担するのも国民だからだ。
だから例え所得再分配機能がどれだけ手厚く弱者を救済しても、
アメリカ型に日本が移行し、グローバリゼーションが進めば、
今まで守ってきた牙城が外からも中からも崩されて、
日本には年収300万円~400万円の人が増えていくのは避けようがないと僕も思う。
ここから、第三のテーマ、300万円時代の話になる。
これは新版
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