香港日本人駐在員 ニセセレブ妻たちの生活 育大〇子

この本は面白い、純粋にそう思った。
この本の存在自体が低俗すぎて、本書の主題であり批判対象である駐在妻たち以上に、
著者の意地悪さ、気持ち悪さ、復讐心がにじみて出ているからだ。
こんなに浅はかで人間らしい本が存在するだろうか?
人間の心理の本質を描写したドストエフスキーなんかよりもよっぽど、真実を描いている。
一言で言うなら
浅ましい。
おそらくこの本にはまともな編集者もついていない。
どうして、ちゃんと文章を添削し、修正してくれる人がいなかったのだろう。
筆者の語彙力、日本語力の無さ、そのままの状態で出版しちゃうレベルの低さ、
周囲からのサポートの無さが、哀愁すら漂わせている。
まるで一度書いて、読み返しもせず出版しちゃったの?と聞きたくなるくらいのでたらめな日本語で、
ひたすら恨みつらみを蓄えた宿敵に対して、本という形をもってして、
言いたい放題悪口を並べ立て、見下し、復讐する。
駐在妻たちの世界の狭さ、能力の低さを軽蔑するはずの文章自体が、
それ以上に筆者本人の教養の無さを証明するという矛盾。
こんな人間らしくなまなましい本が存在するだろうか。
本のなかで批判された駐在妻たちは、
怒りに震えるどころか、
拍手喝采したことだろう。
自分の思い当たる変な人が、
アフタヌーンティーの恰好の話題になる馬鹿げた行為をしてくれて。
日本人は日本人どうしで固まり、集団行動をしようとする。
駐在妻には仕事も無く、社会と接するチャンス、社会から認められる承認欲求を満たすチャンスが無いので、
仲間内で熾烈なアピール競争をし、また上下争いを繰り広げ、自尊心を満たそうとする。
夫の海外駐在で割り増しされた給料と、会社から支給されるちょっと贅沢な住まいで、
すっかりセレブ気分になり、買い物、食事、お習い事、旅行、噂話や自慢話のお茶会に明け暮れる。
みんなサラリーマンの夫についてきた専業主婦にすぎないのに、
業種の違いや、ちょっとした待遇の違いでどんぐりの背比べ。
結局上っ面の付き合いばかりで、その集団の誰とも友達にはなれず、誰も幸せではない。
そこには渇きしかない。
筆者はこういった閉塞環境にこてんぱんにやられて、ストレスを溜めこんでいた。
そのはけ口として本を書くことを考えた。
そうして生まれたのが本書に違いない。
こうした構図すべてを考え、全く別世界の赤の他人がこの本を書いていたとしたら、その人は天才だ。
育大〇子さんが香港に実在した人なのか知らないので、天才の可能性もわずかにある。
本を突き抜けて筆者自身の本性が浮かび上がってくる手法は新しすぎる。
人間というのはこうまで低俗で、つまらない生き物に成り果ててしまうのか、
ちょっと、僕にはこういう人達が、世界が存在しているということをにわかに信じられない。

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