日本人は永遠に中国人を理解できない 孔健

日本人は永遠に中国人を理解できない チャイニーズドラゴン新聞主幹 孔健著
1996年5月20日 第一刷発行
と少し古い本である。けど、中国人の視線から中国人のことをわかりやすく説明した非常に良い本だと思うのでここでお勧めしたい。
孔健さんとはどういう人か。

結構いかつめの風貌の人である。
1958年中国青島市生まれ。55歳くらい。
孔子の第75代目直系子孫という由緒正しい血筋を持つ人だ。
1982年に山東大学日本語学科をなぜか卒業、中国画報社というところに入社し、85年駐日総代表として日本へ。
チャイニーズドラゴン新聞社を設立、主幹を務めているジャーナリストであり、
日本には10年以上住んでいて日本人のことも熟知している。
彼は中国のこと、中国人のことを外から客観的にみる見識を持っているし、
長年の日本生活で日本人文化や価値観にも精通しているので、
中国と日本の文化を極めて公平に語ることができる。
それに加えて、孔子の血筋というのだから、日中相互理解に大きく孔健(貢献)していることと思われる。
しかし、そんなに有名でないのはどうしてだろうか。
イカツイ顔をしてらっしゃるからだろうか。
この本も極めて公平に、むしろ中国人を批判するかのように、
さらに言えば、あたかも日本人の目線からのようにわかりやすく中国の文化、人間性を書いている面白い本と言え、
10年以上経った今でも、なるほどと学ぶ部分は大いにある。
日本人と中国人は顔も似てるし、結構同じだと思っている人は多いだろう。
なるほど日本人にとっては確かに中国は使っている文字も同じ唯一の他民族だし、
文化の影響も甚だしいというか、日本人は中国の文化を一生懸命学んで自国の文化を育んできたのだから、
似ているところは多いだろう。
しかし、お互い理解できないのはなぜか?
戦争という悲劇の憎しみを中国人がまだ根強く持っていて、歴史的日本人の大失敗がその尾を引いているのだろうか?
価値観の違いは、そういった過去の出来事で判断できるものではないとこの本を読んでわかった。
そもそも、中国人と日本人では育んできた生き方、環境が全く異なっていたのである。
それが価値観の違いに影響していると孔健さんは断言する。
孔健さんの語る、中国人を理解する上での三つの重要キーワードを紹介したい。
・中国「騎馬民族・大陸民族」、日本「農耕民族、島国民族」
・中国「乱世・貧困」、日本「安定、裕福」
・中国「社会主義・人治主義」、日本「資本主義・法治主義」
「騎馬民族・大陸民族」
中国は大陸にあり、隣国と境界を接し、その歴史は常に侵略と戦乱の中にあった。
中国では100年続いた王朝がほとんどない。
また、乱世の中で住んでた土地を追われ、流浪し、狩猟して生活をすることは決して珍しいことではなかった。
なので、移住すること、新しい土地に住み、そこに生活基盤を築くことは5000年の歴史に育まれた中国人のライフスタイルともいえる。
世界各地に中華街があるのはこの一例だ。
土地に定着し、田畑を耕し、収穫物を蓄え、安定した生活を送る日本人。
郷土に対する愛着の極めて強い日本人とは大きく異なるライフスタイル。
加えて、こうした流浪民族は生き残る厳しさが体に染み込んでいる。
中国人が権謀術数に長け、交渉ごとにも強く、悪巧みでも何でも賞賛されるのはそのためだ。
また、誰が敵か味方かが生死に関わる問題であるため、敵と認めたら徹底的に叩き潰すのも中国だ。
曖昧さはそこに存在しない。命を危うくするからだ。
今このとき、利益を得られればいいと徹底的に交渉するのも中国人らしい特徴。
騎馬民族だから、一度取引した人とは二度と会うかわからないためである。
日本人は一つの土地に定着し、いつも同じ人としか付き合わない、閉鎖的生活を送ってきた。
長年の評価が利益につながるから、一見さんに対する対応も親切。
そこでは策略は返って信用を失うし、意見の対立は関係の悪化を招いて生きにくくしてしまう。
問題を解決することや、意見をぶつけることを好まず曖昧に流そうとするのが日本人の特徴で、
中国人と大きく違う点だ。
非常にだまされやすいという可愛く、愛おしく、情けない日本人の特徴はこうした文化に立脚されたものである。
 
「乱世・貧困」
中国は眠れる獅子と揶揄されてきた。
ようやく経済発展が軌道にのり、第二の経済大国となった今でも、その潜在能力のすさまじさからすれば未だ発展途上だろう。
膨大な人的資源、土地など、余りあるパワーを秘めながら全然歴史的に活躍してこれなかったのは、
いつも内部で争ってばかりいたためだ。
乱世のために中国人はずっと貧乏だった。
貧乏こそ悪なのである。
人の優しさ、心の豊かさ、思いやり、仁義、親切、愛、正義
そういったものは乱暴な言い方をすれば、衣食住が整って初めて目を向けることができるものであり、
貧乏は、人間として人間らしく生きるための最大の敵なのだ。
日本人は余りに裕福になってしまっているので、この点を忘れることが多い。
みんな親切で当たり前という押し付けがましい価値観がここにある。
だけど、本当は貧乏な人間に、同等の思いやりや優しさ、親切、正義を期待してはいけない。
これは見下すこととは違う。
同じものを期待するなら、まず自分が与えてみろということだ。
それでお金をあげる日本人もいないから、日本人だってまだまだ心の発展途上なのだが、
中国はもっともっと悲惨なくらい貧乏なのである。
生活を立てるために、やむを得ず、と言う部分を理解してあげなければならない。
生活レベルが違ったらそもそも同じものを期待してはいけないのである。
「社会主義・人治主義」
社会主義という価値観は面白い。これはただの価値観であって実体を伴っていないところがさらに面白い。
実体を言うなら、日本こそ社会主義の最たる成功例であり、中国こそ資本主義の見本みたいなものである。
この点はまた別の機会にじっくり考えてみよう。
中国の極めて重要な特徴。そしてビジネスをする上での最大の障壁が、人治主義だ。
何が正しくて何が間違っているか、全ては人が決めるということである。
権力をもった共産党の人が決めるということだ。
だからこそ、賄賂やコネがはびこるのが中国であり、外資が非常に苦労するのもこの点である。
日本は法治国家だ。
裁判所に訴えれば、費用はかかるけど、公平に裁いてもらえる。
正義は必ず勝つ!と誰もが信じて疑わない。日本では当たり前のこと。
それでは正義とは何か?それは法律に書かれていることである。
あくまで天から与えられでもしたかのように大して法律を疑ってかからないのも日本人の特徴だ。
では中国において正義とは何か?それは人が決めるものである。
それは社会の仕組みだけでなくて、文化の隅々に根付いている。
人の影響力が、世の中を決めてしまうのが中国。お金も何もかも動かすことができるのが中国である。
中国で中国人を相手取って裁判でもしたら簡単に負けてしまう。
極論を言えば肩書きとかもあんまり関係ない。
肩書きを見たら、びびってしまう日本人とは大きな差だろう。
こうした中国人と日本人の違いをわかりやすく説明してくれるのがこの本で、
中国のこと、中国人のことを理解する入門編として素晴らしい。
もっとも、もちろん人によりけりなわけで、中国人だからこう、日本人だからこうと決め付けることは、
危険である。
特に若者はネットを通して世界の情報に触れているのでリベラルな価値観を持っている人は多いし、
一見日本人と大差ないように見える。
だけど、依然として学校で教えられているものは日本とは大きく違うし、
言論統制、その他諸々の規制によって政府に監視、管理されて育ってきた中国国民と、
異なる生活習慣、文化、ライフスタイルものもとで生きてきた中国国民と
まったく同じ価値観で話をできるだろうか?して良いだろうか?
その歴史、文化を勉強し、ある程度の知識を持ったうえでコミュニケーションをとることは、
他国の人を真に理解してお付き合いしていく上では大切なことだし、
基本的礼儀のうちだと僕は思うのです。

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク