2006年に発行された本書。
この当時はまだ富士山は世界遺産になっていなかった。
小田さんは富士山を世界遺産にするために活動していたらしい。
今、富士山は世界遺産になっている。
富士山ー信仰の対象と芸術の源泉
文化遺産として登録されたのは2013年。
この本は富士山にまつわるあれこれについて解説している。
富士山は、ただそこにあるだけで人々の信仰の対象になってきた。
文学、芸術、音楽の題材にも数えきれなほど取り上げられている。
まさに日本のシンボルと言っていい存在。
富士山に祀られているのは、木花開耶姫。
日本の主宰神 天照大神。
天照大神の孫が瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)
瓊瓊杵尊のひ孫は第一代神武天皇。
瓊瓊杵尊の奥さんが木花開姫。
木花開耶姫は、瓊瓊杵尊から別の男と交わった嫌疑をかけられ、富士山頂へ上り、
火口に飛び込んだ。
ここで、富士山と木花開耶姫は霊的に合体した。
木花開耶姫は、富士の噴火を鎮める神であった。
かつて富士山は仏の山だった。
末代上人という人が、平安時代に富士山岳信仰を広めた。
末代上人が祭っていたのは、大日如来という仏である。
山岳信仰である富士講を全国に広めたのは江戸時代初期の長谷川角行。
この頃はまだ厳しい修行をしなければならなかった。
その100年後、食行身禄。
富士山の烏帽子岩に入り、一日一椀の雪を食べて入滅する時に、洞穴で説き聞かせた「三十一日の巻」が元となり、八百八という講の誕生を生み出した。
講というのは、富士登山を行う富士信仰のグループのこと。
明治時代になり、神道が台頭して、仏教が弾圧されることで、
木花開耶姫が復活した。
富士の麓を故郷に持つ僕にとって、富士山はいつもそこにあり、
実質的な恵みを与えてくれている存在であった。
それは美味しい地下水を提供してくれる巨大な貯水装置であり、
周辺の自然環境を守ってくれる保護者であり、
人を田舎の街に集めてくれる広告塔であり、
金銭的な恩恵を授けてくれるものであった。
そして、実際にその姿は美しく、毎日違った顔を見せてくれ飽きることがない。
僕は、富士山と共に育った。
ビジネスで空から富士山を見るとき、そこに故郷を想った。
富士山のことを、もう少し知らねばならない。
そう思って本書を手に取った。
多分、多くの人にとっては退屈な本だろう。
でも、富士山が好きな人にとっては富士をより知る手助けになると思う。