自分は何になりたいか?と問われたら、
技術者であり、事業家である。
と答えられるようになりたい。
経営論、経営戦略論、財務、会計、マーケティング、人材戦略、法務、税務、リスクマネジメント、その他諸々、と世の中ビジネスで語られるテーマは色々あるけど、
こうした事業経営一般に共通した知識は、どこの分野の企業経営でも大差ない。
学ぶことは多いんだろうけど、解の無いものばかりだ。
学問として成立していないといってもいい。
僕は、こういったテーマばかり追いかけて、勉強するのは時間のムダだと思っている。
そこにはつまるところ自分なりに適したやり方しかなく、絶対的正解なんて存在しないから。
その会社の色を決めているのは、「技術」だ。
そこで保有している技術的ノウハウ、知的財産だ。
企業の強さを決めるのも「技術」であり、その企業がもつ専門性である。
こうした専門性をどこまで深く理解し、企業経営に活かせるかで、その企業の強さは変わる。
逆に、自社の技術のことがわからずに経営の舵取りをしている人が世の中には結構多いのではないだろうか。
日本では、なぜか人は文系、理系に分けられ、文系が経営全般に関わり、理系は技術関係を担当するというよくわからない常識がある。
自分たち自身のことを知らずに正しい意思決定などできるはずがない。
文系、理系などという分けなどそもそもあり得えない。
あえて言えば、文系職などという業種は必要なく、すべての人は理系にならなければならないと僕は思う。
なにも数学や物理、化学といった理科が得意な人間というわけではない。
理系を定義するならば、自分の担当分野に対して、深く広い知識と専門性を兼ね備えている人間だ。
そして担当分野について探求心を持ち、論理的に思考できる人間だ。
プロフェッショナルであるという自負と覚悟をもって生きている人間、と言ってもいいかもしれない。
僕は、エンジニアとな何か?理系とは何か?について、ある技術者に聞いたことがある。
そして返ってきたのが上のような答えだった。
つまり、文系は理系になれないとか、理系と文系は違うとか、そんな言い訳めいた分けは必要なく、
心持と行動一つでその人は理系になれる。
僕は、探究心を常に持ち続けるエンジニアになりたい。
どうすればエンジニアになれるのか、
文系的なビジネス本は多々あれど、理系として、エンジニアとしてどう自分を鍛えればいいのか、
そういった本にはあまりお目にかかったことがなかった。
(このこと自体が異常だと思うのだけど)
そんなとき、たまたま見つけたのがタイトルの本。
菊池正典さんは、1968年、東京大学工学部物理工学科を卒業。日本電気(株)に入社以来、一貫して半導体デバイス・プロセス開発に従事。半導体開発と量産を経験後、同社半導体事業グループ主席技師長、NECエレクトロンデバイス主席技師長、日本半導体製造装置協会専務理事を歴任するなど、いわば一流の技術者。
そんな人がエンジニアとしての心得を書いたのが本書。
この本では「V字型エンジニア」になれ。と説かれている。
専門性を「深く」極め、かつ関連技術やその他分野に関する知識、造形も「広く」もてということ。
「彼に聞けば、わかる」といわれるようになること。
技術というと、とかく学術的で、なにか難しい本を読んだり、理論を勉強しなければならない、と感じがち。
だけど、「わからないことは一番良く知っている人に尋ねる」のが一番確かで、一番早くて、確実である。
と筆者は考えている。
これは忘れがちなことだ。言葉や会話は曖昧で、不明瞭、不確かだという先入観があった。
技術の世界でも人の話を聞くことが大切なのだ。
もっとも、人の話を理解できるくらい、その分野に精通していることは大前提として。
エンジニア経営者に求められる能力は以下4つだと筆者言っている。
①技術に明るい
②技術を市場性や戦略性を含めた、より広い視野や高い観点から捉えられる
③技術の「不易」の部分をみにつけている
④技術に関し、経験や洞察力に裏付けられた直感的な勘が働く。
「不易」とは聞きなれない言葉だけど、ようは普遍の本質。
技術にも2つある。
「不易」という基盤技術、共通技術。基本的理論
「流行」という先端技術、応用技術。
流行ばかり追いかけたエンジニアは基礎が出来ていないので、発展性や応用力に欠けると筆者は危惧している。
特に全体俯瞰的な視点を持つためにも、回り道のようでもしっかりと本質的な理論を勉強すること、
これが最終的には有能なエンジニアとして不可欠なのだと言っている。
これは実体験からも共感できる。
確かに、新しい技術や一つの課題に対する答えはその知識を暗記すれば対処できる。
だけど、それがどうしてそうなるのか、理論的背景はどうなっているのか、その基礎をしっかり理解していなければ、
応用的な問題や、条件を変えた問に対して、論理的な解を導けない。
基礎を勉強するのは、意識が必要だ。
会社にいた場合、目の前の課題を対処したことを評価されても、基礎を勉強して評価されることはまずない。
自分で時間をつくって意識的に取り組む必要がある。
だから仕事とかそういうのを超えてプロフェッショナルとしての生き方が問われてくるのだ。
エンジニアは基礎が大切。
それはきっと、ITみたいなばく進して進歩している分野であっても同じではないかな。
技術は、理論体系の上にあるものであり、形をつくるものであり、実践でもある。
だから、ビジネス論云々をあれこれ勉強する暇があるなら、価値のある専門性を身につけることに時間を使った方がずっと有益だと僕は考えるのです。
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