シンガポールと香港って似てる。
よく二つの都市のことを勉強してなかったけど、そう感じてた。
仲の良かった友人もシンガポールに住んでいて、
僕も何度か行ったことがあって、さらに似ていると感じるようになった。
似ているように思うと、次にどこが違うのだろう、と思い始める。
香港での生活、シンガポールでの生活、どう違うだろう。
アジアでは香港とシンガポールはダントツで先進した街。
ある意味では東京とかソウルとかを超えている。
生産能力も生活水準も高い。
金融系エリートがアジア圏で海外移住する際もだいたい、この二つに落ち着くことが多い。
今のところは、まだ上海よりも地位が上のイメージ。今のところはだけど。
香港に住んでいて、シンガポールに移動した友人。
シンガポールから香港に来た友人。
シンガポールに行くと信じ込んでて、来てみたら香港だったという、違いも全くわかってない友人。
身近なところでも、この二つの街は地理的な距離より精神的な距離が近い。
そして、僕もふと考える。
香港にいるけど、将来シンガポールに住むとしたら何が違うんだろうか、と。
そんなことを漠然と考えていたので、この本の存在を見つけた時は自然と手に取った。
著者の岩崎育夫さんは、教授で東アジアとか東南アジアのことを研究しているらしい。
シンガポールは1819年誕生、1963年に144年間の植民地支配を終える。
香港は1842年誕生、(新界は1898年から99年間の租借)1997年中国に返還され、155年間の植民地支配を終える。
2006年時点の人口はシンガポール361万人、香港700万人。
シンガポールは華人77%、マレー人14%、インド人8%。香港は華人95%。
二つの地域の広さは大体同じくらい。
さて、この本を読んだ後、僕は二つの都市の同じところ、違うところは何だと答えるだろう。
香港とシンガポールが同じところ
・小さな島に形成された都市社会
・移民がつくった街
・華人(中国人)の街
・もともとイギリスの植民都市
・中継貿易基地として発展、軽工業で成功、現在はアジア、世界の金融センター。
・観光業がさかん。
・自給自足できない。
・貧富の差の問題。高齢化、少子化問題。
香港とシンガポールが違うところ
・華人の街といってもシンガポールにはマレー人、インド人もいる。
・シンガポールはシングリッシュがローカル語。香港は広東語がローカル語。
・シンガポールはクリーンでお行儀が良い。香港は猥雑。
・シンガポールは国家主導型、香港は自由放任主義。
・シンガポールの地下鉄はMRT、香港の地下鉄はMTR。
・シンガポールは現状満足派増加気味、香港は依然チャレンジ精神旺盛(金儲け主義?)。
・シンガポールは政治的関心が薄く、香港は強い。これは中国との関係によるものが大きいと思われる。
・当たり前だけど、シンガポールは独立国家、香港は中国の一特別行政区。
・シンガポールは年中常夏。香港にはかろうじて四季があり、冬もある。
・シンガポールは東南アジアの中心、香港は東アジアの中心。
こうやってみてみると、シンガポールと香港ってやっぱり似ている。
住んでみて大きく違うのは、香港はまだまだ移民による移民の都市であるということ。
香港自体が政治的に独立しておらず、中国の支配や影響に怯え、アイデンティティが常に存続の危機にさらされている。
このような状況では、定住者としての意識を醸成するのが難しいのは当然といえる。
150年かけて香港人は香港人意識を形作ってきた。今の若者は自分たちが香港人だという自負がある。
でも、一国二制度が維持されるのも残り30年と迫った今、それが消え中国と融合するのも時間の問題ではないかと思われる。
僕個人的には、猥雑で、金儲け主義で、ハングリー精神旺盛な香港のほうが、やっぱり合う気がする。
どうせ海外に住むなら、そのくらいのところのほうが面白い。
家族持ちの人なんかは住みやすく、クリーンなシンガポールのほうが良いって話をよく聞く。
似ているけど、ちょっと違う。やっぱり、シンガポールと香港の差って興味深い。
アジア都市誕生の四つの時期区分
第一段階―前近代期
長安、落陽、開封、デリー、慶州、アンコールトム、パガン
第二段階―近代初期 13世紀末から18世紀待末
南京、杭州、北京、ソウル、江戸、アユタヤ、マラッカ、パレンバン(スマトラ島)、ルアンプラバン(ラオス)、ビエンチャン(ラオス)、
マンダレー(ミャンマー)、スラカルタ、ジョグジャカルタ
第三段階―欧米植民地期
ジャカルタ(オランダ)、マニラ(スペイン)、クアラルンプール(イギリス)、ペナン(イギリス)、ヤンゴン(イギリス)、
シンガポール(イギリス)、ホーチミン(フランス)、香港(イギリス)、カルカッタ、ムンバイ、チェンナイ、ニューデリー、
ラホール(パキスタン)、ダッカ(バングラデシュ)、コロンボ(スリランカ)
第四段階―現代
イスラマバード、ネピドー、深セン
アジア二都物語 [ 岩崎育夫 ]
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