運命の人 山崎豊子(Yamasaki Toyoko)

大正13(1924)年、大阪市生まれ。
京都女子大学国文科卒業、毎日新聞大阪本社に入社。
昭和32年、生家の昆布商を題材にした処女長編「暖簾」を書下し刊行。
翌33年、「花のれん」で第39回直木賞受賞。
同年退社、執筆に専念。
「白い巨塔」、「華麗なる一族」、「不毛地帯」、「二つの祖国」、「大地の子」、「沈まぬ太陽」など、
近代史、現代史にかかわる長編小説を発表し続けた。
一作品の執筆に6から7年間を掛ける。
この作品も取材、執筆に8年間を掛けているらしい。
21年、「運命の人」では第63回毎日出版文化賞特別賞を受賞した。
新作「約束の海」を連載中に2013年9月29日死去。88歳没。
死ぬまで小説を書き続けた生涯だった。
結局、「運命の人」が完成された最後の作品となった。
運命の人は、西山事件という1971年の沖縄返還協定にからみ、取材上知り得た機密情報を国会議員に漏洩した毎日新聞社政治部の西山太吉記者らが国家公務員法違反で有罪となった事件を題材にしている。
この事件で毎日新聞の発行部数はかなりのダメージを負ったらしい。
現実の事件を題材にした物語は、一般読者の立場からしたら面白い。
難しい題材でも面白く学ぶことができるし、娯楽作品としても楽しむことができる。
現に山崎豊子さんは放送作家のような存在で、
その長編小説のほとんどが、映画化、ドラマ化されている。
だけど登場人物当の本人からしたら、ドラマ的に脚色され、
事実を曲げられて一つの娯楽作品として発表されることは堪らないだろう。
事実が何かは問題にされず、小説の中の世界が、真実になってしまう。
運命の人の冒頭には
「この作品は、事実を取材し、小説的に構築したフィクションである」
と書かれている。
なんとも曖昧でズルい表現だ。
フィクションと言いながら取り合えているのは明らかに現実に起きた事件である。
それでいてフィクションであるから、事実と一致していようがいまいが関係ない。
なんだかんだ言っても、山崎豊子氏の物語がこれほどまでに映像化され、人気を呼んだのは、
やっぱりそのストーリーテリングの才能が素晴らしかったからで、
こうした社会小説?的なものが、世の問題提起に一役買っているのも事実だと思う。
これから先、山崎豊子氏の作品が読めないのは寂しい。

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