石田衣良といえば、代表作は池袋ウエストゲートパーク。
若者を描いてきた作家が40歳のおっさんに焦点をあてた。
石田衣良自身がこの本を書いた2009年当時、40歳だった。
登場人物たちが語る言葉には、石田衣良自身が40歳になった思いが含まれているはず。
「人生の半分が終わっちまった。それも、いいほうの半分がもう終わっちまった」
これが言いたいことの半分であり、
「終わったのは、まだ第一章だけだ。これからもっと心豊かな黄金色の第二章がやってくる。
今このときを全力で生きるのだ。40歳から始めよう」
主人公が、その先の人生を諦めることなく、希望を抱いて胸に刻んだこの最後のセリフが、
きっと石田衣良が自分に言い聞かせたもう半分。
僕は、いつも少し先を考えて生きている。
いつも将来のこと、未来を考えて生きている。
逆にそのせいで今を純粋に楽しんで生ききれていない気もする。
自分は、自分が感じているよりいつも若い。
アラサーの僕は、この本を取った。40という次のステップがどんなものか見たかった。
しかし、そういった意味では対した参考にはならなかった。
確かに構成はうまい。
主人公の始めた40歳プロデュースビジネス。
そこに関わる登場人物たち。
そして最後には彼らを舞台に立たせることを目玉にした中年の就職支援イベント。
でも、全然、心に響いてこない。
主人公はよく涙をながす。でも、なぜに涙を流しているのかよくわからない。
というか感情移入できない。
この本を読んで、主人公と一緒に泣ける人っているんだろうか。
短いストーリーにまとめようとしているからか、あまりに登場人物たちが良い人で、素直すぎる。
40歳ってこんなに素直だろうか?人生の半分を生きてきて、もっとひん曲がっているべきじゃないか?
そうじゃなきゃ、つまんなくないか?
そもそも40歳って人生の半分なのかな。
かなり半分を過ぎている気がする。もう三分の二くらいじゃないだろうか。
40歳。遠いようで近い。
40 翼ふたたび (講談社文庫) [ 石田衣良 ]
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