この残酷な世界で日本経済だけがなぜ復活できるのか 渡邉哲也

渡邉哲也とは、本の後袖によると、
作家・経済評論家。1969年生まれ。44歳。日本大学法学部経営法学科卒業。貿易会社勤務後、独立。
2ちゃんねらーとして有名になった人らしい。
内外の経済・政治情勢のリサーチや分析に定評があり、さまざまな政策立案の支援から、雑誌の企画・監修まで幅広く活動を行っている。とのこと。
本書は、米国の政策、欧州の金融情勢、日本のアベノミクス、中国の現状について2013年7月当時の情報に基づいて、
筆者が状況分析を行っている。現状分析に留まり、この先どうなるかということについてはあまりはっきりと語られていない。
最後は、日本人は自信を持って、自分の利益に立ったポジショントークを行い、行動していくべきだ。
テレビ、ラジオ、新聞と言ったマスコミは情報操作しかしないから、ネットを駆使して正しい知識を持ち、
個人レベルでも情報を発信していくべきだ。といった元2ちゃんねらーらしいことを言って本は締めくくられる。
本についての批判は置いておいて、改めて本書でも取り上げられている世界経済の注目点を挙げてみる。
【アメリカ】
金融政策の出口戦略。資金を擦りまくってきた政策をどう手仕舞うか。
これによってドルの流通量が絞られ、各国の金融市場、特に新興国の市場に影響が及ぶのではないか、
という懸念がある。
所見:お金の刷る量を減らしていくのであれば、今後は今までと同じように株式市場は上昇していかないだろうけど、
ドルが減るわけではないんだから、停滞ということはあっても、即暴落にはつながらないのではないのか。
【欧州】
・財政政策はできても金融政策ができない。
欧州中央銀行(ECB)がユーロの発行を管理している。
これにより、ユーロ圏の国は自由に自国の通貨を発行し機動的な金融政策で経済を立て直すことができない。
・意思決定ができない
欧州には利害のことなる国々が経済的に結びついており、一枚岩ではなく、迅速な意思決定ができない。
【中国】
・情報が不透明で実態のところどうなっているのかよくわからない。
問題がはっきりと見えてこないのが一番不安なところ。不安とは以下のようなもの。
・大したことなさそうな内需
GDPの成長率はほとんど投資によるもので、実体経済は成長していないのではないか。
「保八」といって成長率8%を維持することを国策としているが、現在も既に作られた数字である可能性があり、
バブルがはじけたら何が残るかわからない。
・シャドーバンキングで地方政府の借金額がわからない。
地方政府は200兆円の借金に加え、簿外債務が420兆円あるのではないかと言われている。
シャドーバンキングとは、特定目的会社をつくって、そこで借金をさせることで政府の借金に見えないようにすること。
これによって、地方政府は不動産ディベロッパーとして財政資金と賄い私腹を肥やしてきた。
・米国にドルで首根っこを押さえられている。
人民元を基軸通貨を目指しているが、変動制でない人民元は一地域通貨でしかなく、道のりは長い。
結果、ドルを使わなければならない構図は変わらず、米国に対して、必ずしも強い交渉力を持てているわけではない。
こんな中、日本の未来は明るそうだというのが、この本の趣旨だろうし、アベノミクスのおかげできっと良い方向にいくと僕も思う。
【アベノミクス】
三本の矢; 大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略
・大胆な金融政策
マネタリーベースを二倍にして、2%のインフレを実現する。
・機動的な財政政策
国土強靭化プロジェクトによってインフラ整備に金を使い、経済を底上げ。
・成長戦略
これもまた三つからなっている。
「日本産業再興プラン―産業基盤強化」
①緊急構造改革プログラム(産業の新陳代謝の促進)
②雇用制度改革・人材力強化
③科学技術、イノベーションの促進
④世界最高水準のIT社会の実現
⑤立地競争力の更なる強化
⑥中小企業・小規模事業者の革新
「戦略市場創造プラン―課題をバネに新たな市場を創造」
①国民の「健康寿命」の延伸
②クリーン・経済的なエネルギー需給の実現
③安全・便利で経済的な次世代インフラの構築
④世界を惹きつける地域資源で稼ぐ地域社会の実現
「国際展開戦略―拡大する国際市場を獲得」
①戦略的な通商関係の構築と経済連携の促進
②海外市場獲得のための戦略的取り組み
③我が国の成長を支える資金・人材等に関する基盤の整備
日本がしっかりとした戦略を持ち、その実現のために政・官・民が協力していくことができれば、
この上向きの状況を維持して、もっと強い国にしていくことが本当に可能になるし、今がまさにその時なのだと思う。
最近日経平均株価も16000円を超えた。
米国、欧州がつまずかなければ20000円くらいまでは地道に昇っていくのではないか。
この先どうなるかわからない不安定な国に投資するよりも、当面は日本を選んだ方が良いでしょう。

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